一人目の経理になったらやるべきこと①(売上高計上編)
目次
一人目の経理になった…。さて、何から手を付ける?
おそらくやることは山ほどあると思います。
まず、月次決算を締めてくれって言われるかもしれません。
いや、それよりも請求書の束をファイリングしてくれって言われるかもしれません。
税理士に今まで外注してたから税理士から話を聞いてね、だってある。
そもそも、一人目の経理という募集を見たら、まず何もないという認識をすべきです。
先人や総務の方が何かやってくれていたらラッキーくらいに思いましょう。
何もないところから、経理業務を作る。
つまり経理制度の0→1構築をやりに来ているわけです。
意外とここの覚悟がない人が多いので、一応の念押しです。
これが理解できていれば、あとはどうとでもなるはずです。
制度を作ったことがない?これから経験すればいいんです。
税務をあまり知らない?税理士に聞けばいいんです。
特定論点が分からない?Google先生や専門書を紐解きましょう。
で、これから書くことは私の少ない経験ながらも、
一人経理として飛び込んだらどういうところをチェックして直していけばよいか、
というのをシェアできればなと思います。
チェックポイント
- 売上高計上
- 売上原価計上
- 売掛金管理
- 有形固定資産管理
- 無形固定資産管理(ソフトウェア)
- 借入金管理
- その他のB/S残高管理
今回の範囲
売上高計上にフォーカスしていきたいと思います!
売上高はどの企業も絶対計上しますが、意外と計上となると難しいのです。
その難しい売上高を漫然と見ていると、何が正しいかわからなくなるので、
どういうところに注意すべきかを書いていきます。
売上高計上
さあ、早速売上高についていきましょう。
売上高の計上が怪しいとどういうことになるかをまず考えていきたいと思います。
⓪売上高計上が怪しいと起こりそうなこと
実際に売上高の数字が怪しいとどうなるかを、
一部実体験を踏まえて羅列していきます。
- ショートレビューの際に監査法人から「この収益認識おかしくないですか?」と修正を迫られる。
- 売掛金の消込がなぜか合わない
- 売上原価、こんな少なくていいの?超粗利出てるじゃん!という勘違いが起こる。
- 「営業部と認識している数字と違うんだけど…」と社内から疑いの目で見られる。
- 意図してないにもかかわらず、
結果として売上の過小・過大計上をしてしまう。(不正経理ですね)
こんなにやばそうなことが起こるのです!こんなのはさっさと固めてしまうに限る!
次からはまず何をやるべきかを追っていきますね。
①仕訳をざっと見る
多分情報がないまま見てもわかりませんが、
総勘定元帳をまず落として、ざっと売上の仕訳を見ましょう。
ここで理解する必要はなく、いったいどんな特徴があるのかをつかむのです。
大体、以下の情報が大まかに分かればよいかなと。
- 仕訳量/月
- 売上高/月
- 売上高が多い取引先
- 逆伝が入ってるなど不思議な動きをしている仕訳
- 売掛金/売上高以外で売上高が切られている仕訳
ここら辺の情報があると、ビジネスが分からなくても、当たりがつけられるので
とりあえず機械的に見ることが重要です。
また、定款もできればゲットしましょう。
定款の「目的」を見れば、何をやっている会社なのかが把握できます。
②商流を理解するために、営業部長かそれに準ずる人を捕まえる
さあ、仕訳情報をもって営業部長とMTGをセットしましょう。
商流が分からないと、収益認識フローの構築なぞできるわけがないので、
可能であれば資料をもらって、以下をチェックしましょう。
- ビジネススキーム
- 商材は何があるのか
- 商材の特徴
- 商材ごとの役務提供期間
- 商材ごとの役務提供終了地点(何をもってサービスを提供しきったことになるのか)
- キャンセル条項とかあるのか
- 商材ごとの取引先
- 受注管理方法
- 予算があれば、予実管理方法
- 請求書の発行フロー
- 業界ならではの特殊事情
ビジネススキームなどはさらっとでいいと思うのですが、
役務提供期間やキャンセルの話はよく聞いておきましょう。
役務提供期間が長期間だけど、既に役務提供がすべて完了していて、ノンキャンセラブルだった場合、 売上を期間按分せずにワンショットで一括計上できる可能性があります。
とか、検討するために非常に重要な情報になります。
③契約書を隅から隅まで見る
次は取引先との契約書を見ます。
②で聞けた情報が本当に正しいか、
もしくは把握されていない重要な情報が契約に入ってないかを入念にチェックしましょう。
ただ、スタートアップはそもそも契約書がない、という状況も考えられます。
その場合は②で聞いた内容で巻き直してもらう別のプロジェクトを走らせましょう。
④売上計上(収益認識)フローを作る
ここら辺が聞けたら、①で調べた仕訳とチェックしてみましょう。
ちゃんと得られた情報通りに仕訳が切られているでしょうか。
切られていれば、既にある程度のフローができています。
業務フローマニュアルがなければ、時間のある時に図式化しておきましょう。
切られていない場合は、早急にあるべきフローを作りましょう。
最初は手書きとかでいいです。ラフに作って、担当者を集めて認識合わせのMTGを開催してください。
この時に上長の承認フローなど、内部統制を効かせる場合はどうするのかまで 考慮に入れられればいうことないです。 余力があればぜひ!
とはいえ、それは欲張りなので、とりあえずはあるべきフローに注力しましょう。
過去の修正は後で大丈夫です。
今の止血をするためにあるべき収益認識フローを固めましょう。
擦り合わせが終わったら経営層に報告しましょう。
特に結構な変更が発生する場合は軽くジャブを打っておくのがいいです。
フローが固まったら、当年度内の売上の仕訳をチェックしましょう。
既に入金があるものに関しては入金ベースに合わせていくしかないのですが、
過少・過大請求があった場合は、即時に取引先と連携する必要があります。
⑤受注管理表をチェックする
どんなビジネスでも顧客がいる以上、受注金額を管理する必要があります。
それはSaasだろうと製造業だろうと同じです。
受注管理表は、売上の根拠数字になるので非常に大事なのですが、
ここの管理がまずいケースが良くあります。
特にスタートアップの場合、フロントサービスにパワーをかけるあまり、
マスター管理などが後回しにされ、思うようなデータが取れない、
もしくはスプレッドシート管理になっており、整合性が取れていない、などが想定されます。
受注管理がうまくいってないと、②でいい感じのフローを作っていても、
請求漏れが発生し、せっかくの売上をとりっぱぐれるなんて事態になりえます。
なので収益認識のフローが固まったら、受注管理にもチェックの手を伸ばしましょう。
この段階が終われば、これから計上する分は大丈夫ですし、売掛金の管理もだいぶ楽になるはずです。
まとめ
売上高計上で大事なのは、まずビジネスに即した仕訳・請求ができることです。
そのうえで監査法人の監査にも耐えられるシステムにするためには
どうするべきか、という検討をするべきです。
いくら監査に耐えられるフローを作っても、それで計上が煩雑になったり、
請求書の発行が遅れたりするのは本末転倒です。
重要なのは、
- フロントに即して、
- 運用しやすいフローであり、
- かつ、統制が取りやすく、
- 監査法人もニッコリ
上記を意識すれば自ずといい感じになるのではないかと思っております。