一人目の経理になったらやるべきこと(売上原価編)
目次
チェックポイント
前回は売上高が終わりました。ようやくスタートしたところです。
- 売上高計上
- 売上原価計上
- 売掛金管理
- 有形固定資産管理
- 無形固定資産管理(ソフトウェア)
- 借入金管理
- その他のB/S残高管理
今回の範囲
売上の次ときたら原価ですね。
ここでようやく粗利が固まります。
前提
売上原価というと、まず最初に頭に浮かぶのが原価計算です。
私も製造業にいた時にガリガリ原価計算回していたことがあります。
が、今回の話はゴリゴリの原価計算の制度構築ではなく、
スタートアップ・一人経理ができる範囲内の原価計上の話になります。
標準原価計算・原価差異の処理などの話はないのでご留意ください。
売上原価って何?
ちょっと定義が難しいので、家にある本から引っ張ってきてみました。
ある目的を達成するための行動の遂行に際して費やされる価値の犠牲
(会計プロフェッションのための原価計算管理会計 P17より)
おお、いいこと書いてありますね。
つまり、簡単にいうと以下のようになると思います。
- ある目的を達成するための行動の遂行:
- 売上を上げる
- 費やされる価値の犠牲:
- (売上を上げるために)作った・もしくは構築したモノ・サービスに費やしたコスト
例えば、オンラインで動画コンテンツを提供している会社の原価は、
動画を制作するためにかかったコストです。
そのコストを要素分解してみましょう。
例えば、一例としてこんなコストが想定されます。
- 動画に出演する講師の費用
- スタジオの家賃
- 撮影機材の減価償却費
- 提供するサイトを制作したエンジニア人件費 or ソフトウェアの減価償却費
- サーバー費用
また、webやアプリで広告収入を得ている会社だったら、
こんなコストが原価になる可能性があります。
- バナー製作費
- 記事のライティング費用
- 広告に係る外注費
- アプリやwebに費やしたエンジニア工数
or ソフトウェアの減価償却費 - サーバー費用
このように、売上を上げるために作った元ネタのコストが売上原価になるわけです。
実際の計上時の注意
例に出したように、売上の計上が固まってしまえば、原価は必然的にそれに対応するので、
そこまで難しいものではありません。(除くソフトウェア計上による減価償却費)
ただ、注意しなければいけないポイントはいくつかあります。
原価項目をもれなくダブりなく計上する
いったい何が原価項目になるのか、
また、どのように計上していくのかを設計する必要があります。
動画コンテンツ制作会社の例を見ると、
一見動画制作だけなんだから講師費用だけでいいんじゃない??
って思ってしまうかもしれません。
ただし、実際には動画配信する箱であるウェブサイトやアプリがないと、
サービスが成立しないので、ここのwebやアプリの制作費用も原価に計上しなければなりません。
原価計上に漏れなどがあると、後々ショートレビューなどの際に突っ込まれますので 多少面倒でも、いろいろな部署からヒヤリングし、MECEな原価計上を心がけてください。
費用収益対応の原則
売上原価の計上で最も面倒なのが、これです。 費用収益を対応させる必要があるのです。
売上の計上と、売上原価の計上は一致させなさいよ、という鉄の掟があるのです!
先ほどの動画コンテンツ制作で行くと、こんな感じです。
- 動画を作るためには動画を作らなければならない。
- トータルで100万円の動画制作費用が掛かった。
- 動画を視聴する権利を販売した。売上高は1,000万円。
- 動画配信期間は10か月なので、売上高は100万円/月を10か月にわたって計上。
- なので、原価もそれに合わせて10万円/月で、10か月にわたって計上。
ここで注意が必要なのは、費用と収益を一致させるので、売上を期間按分するのであれば、
当然に、売上原価も期間按分してくださいよ、ということです。
この例示は簡単に見えますが、これが30本とか走っていたらどうですか?
結構ぞっとする話ですよね。
しかもそれが按分されてなくて、修正してね、みたいなことになったら。。。
怖い話です。
費用収益対応、というのは言葉では簡単ですが、実際にやると結構苦労します。
いかに按分せずにワンショットで一括計上できるように考えるか、
というのも大事な経理設計の一つです。
まとめ
- 売上高計上が決まってしまえば、そこまで難しくはない
- ただし、ソフトウェアの計上が絡むとそこは面倒なところがある
- 原価項目はもれなくダブりなく計上する
- 売上原価は、売上に合わせて計上する必要がある
- 期間按分せずに一括計上できる設計は腕の見せ所