一人経理の独り言

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オフィス移転で検討すべき仕訳

目次

さあ、引っ越しだ!

スタートアップは、調達がうまくいったり、スケールしたりすると
爆発的に人が増えます。

そうなると、オフィスが狭くなりますね。
ぎゅうぎゅうになったオフィス、衛生環境が良くないです。

というか、物理的に人が入らなくなるので、
スタートアップは結構引っ越します。

スタディプラスも2018年12月に晴れて引っ越ししたので、
そのときに発生した仕訳について書いていきますね。

旧オフィスの有形固定資産の除却処理

まず、思いつくのが今いるオフィス(旧オフィス)の資産ですね。
内装工事で設置した間仕切りや購入した家具や応接セットなど資産計上しているものありますよね。

仕訳自体は取得価額と減価償却累計額を逆仕訳して、
簿価を固定資産除却損できるだけなので非常に簡単ですが、

いくつか気を付けるべき事項があります。

注意点①:除却した証拠写真を撮る!

忘れがちですが、会計人はエビデンスを残す必要があります。
ちゃんと捨てて、処理しましたよ!という証拠です。

写真です。

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廃棄するものをゴミ捨て場か「廃」のマークなどを張り、
もう事業の用に供してないぜ!と高々に宣言しましょう。

そしてその写真とともに、稟議や決裁を取っておきましょう。
ワークフローでも上長印でも大丈夫です。それが仕訳のエビデンスになります。

注意点②:一括償却資産の除却

一括償却資産は、税務上は除却しても損金にならず、通常の減価償却分だけの損金計上になります。
しかし、会計上は除却損が計上されますので、税務と会計で不一致が生じます。

また、freeeを使用している場合は、固定資産台帳で一括償却資産が除却できないので、
以下の手順を踏むことになります。

  • 除却の仕訳を振替伝票で切る
  • 固定資産台帳での月次償却を止める
  • 税務上は償却が終わるまで認識していなければならないので、償却が終わるまで削除はしない
  • 3年経過後に削除して固定資産台帳から消す

つ、つらい…!!
頼むぜ、固定資産台帳…!

また、一括償却資産の除却の損金の論点は以下を参照してくださいな。

www.nta.go.jp

新オフィスの資産計上

さあ、引っ越しをしたら請求書の束が来ます。
今まで建設仮勘定で貯めてたものと合わせて、まとめて仕訳切っちゃいましょう。
手元に必要な資料はありますか?

見積書とオフィスレイアウトです

見積書は請求書と金額が同じものを用意しましょう。
そっちのほうが断然楽ですし、恣意性が減るので数字の信頼も増します。

固定資産は基本的に役務の用を足す最小単位で仕訳を切ります。
例えば、テーブルセットであれば、机と椅子にばらして考えます。

そのうえで20万円の判定(一括償却資産採用の場合は10万円)を行い、
固定資産・費用の仕訳を切ります。

その際に注意する点を挙げます。

注意点①:按分処理について

見積書の項目を見ると、明らかに単体で処理できないものがあります。
そういうものは現物に配賦するのですが、配賦する際には以下の点に注意してください。

  • 特定の固定資産に紐づくものは、その範囲内で配賦する。

    • 例えば家具A・B・C・D設置費用だったら、全体に配賦せず、
      家具A・B・C・Dのみに配賦すべきです。
  • 全体に係る費用は、全体に配賦する。

    • 例えば、一般管理費とか設計費用がそれに当たります。

注意点②:賃貸物件の内部造作について

スタートアップにありがちな論点です。
賃貸物件を改装するなどして、内部造作が発生する場合、耐用年数を見積もってねという論点が出てきます。

例えば賃貸物件で天井をぶち抜いた場合や、床の張替えなどはまさしくドンピシャです。
タックスアンサーでも書かれてますね。

www.nta.go.jp

ただ、見積もれって言われても何年でやればいいの…、という方、朗報です。

平成28年10月改定版問答式法人税事例選集(P397)によると、
合理的な見積もりが難しい場合は、耐用年数18年で設定できると書いてあります。

税理士法人にも確認を取ったので、見積もりが難しい場合は18年で使いましょう。
なお、原則的には勘定科目は建物らしいのですが、同じ定額法なので建物付属設備でも問題ないとのことです。

私の仕訳も内部造作は、建物付属設備・18年で切りました。

資産除去債務

原状回復費用が発生する場合は、資産除去債務も計上しましょう。
計上に必要なものは以下の通りです。

上記2つがあれば、後は計算するだけです!

計算方法

詳しい計算方法はいろんなサイトに書いてあるので概要だけ。 私は原則法で計算したので、原則法の方を載せますね。

  • ①:原状回復費見積もり額を国債金利で割り引きます。これが発生時の資産除去債務です。
    • 見積金額10百万円、耐用年数15年で金利3%であれば、ROUND(10/(1+0.03)15,0)=6、な感じです。
  • ②:毎期末に利息費用と、減価償却費を計算して計上する 。

  • わからない場合はなんか連絡いただければ、解説いたします~。

耐用年数の注意点

資産除去債務を考えなしに15年で計上しようとしたところ、
監査法人から以下の指摘をいただきました。

過去の実績から、引っ越しを3-4年周期で行っているのに、15年で計上する根拠は何か

そのため、私はなぜ15年で計上するのかの根拠を作成するとともに、
移転せずに増床で対応することを事業計画に織り込んでもらうことにしました。

おっしゃることはわかりますが、ここで3年とかにしてしまうと、
他の固定資産も税務ではなく、見積の対応をしなければおかしなことになるので
絶対避けたかったので必死に対応しました。

過去の計上で言われたことがなかったので、少しびっくりでした。

償却資産税の対象?

資産除去債務は償却資産税の対象にはなりません!
間違って申告対象に入れないようにしましょう。

見積だから税務上損金不参入だから入れなくていいよな…、
と思いつつ、ビビりなので調べても答えがなかったので、こちらも顧問税理士に聞きましたw

旧オフィスの処理

旧オフィスの方も敷金等の精算もあるかと思います。
こちらの処理も忘れずに行いましょう!

資産除去債務を積んでいたら取り崩してくださいね。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでもお役に立てたら幸いです。

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