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小口現金3.0時代の廃止の仕方

目次

小口現金とは

言わずもがな、会社の金庫の中に入っている、あいつです。
イレギュラーな出費や現金で謝礼を払いたいなどのニーズにこたえるために、
会社で持っている現金です。

小口現金の役割の変遷

経理業界では、小口現金に対する評価・立ち位置が時代とともに明らかに変わってきています。
どういう風に変わってきたのかを少し書いていきたいです。

小口現金1.0時代

  • 経費精算?そこまで待ってらんないよ。
  • すぐ現金でほしいし、急な出費とか立替してなんて言うの?
  • だって会社都合の出費だよ、すぐ精算してよ!

小口現金大活躍です。
会社によっては現金で経費精算処理なんて会社もありました。

社員の言い分もわかります。
なんで業務命令で行く出張とか、接待の費用を立て替えなければいけないのか?
忙しい営業マンであれば、立替が10万円超えるなんてしょっちゅうあります。

例えば、月給30万円の社員に、10-20万円の立替は非常に重荷になります。
プライベートのキャッシュフローが気になり、仕事に集中できない!
ってこともあるかもしれません。

私も債権回収で全国行脚をしていたときに、
立替20万円超えていたのでその気持ち、よくわかります。

ただし、経理にとって小口現金は非常に負担のかかる業務です。
いつ小口現金が必要なのかを把握し、そのたびに金庫からお金を出して、
おつりがあったら入金する。

領収書を都度出してと、お願いをしに行き、残高がなくなったら現金を銀行に下ろしに行く。

その上、小口現金出納帳と実際の現金に差異があったら、めちゃくちゃ責められる。。。
あたかも合わせるのが当たり前な典型的な低付加価値業務。。。

経理にとって小口現金は辛いタスクの代表格です。

小口現金2.0時代

  • 内部統制強化が叫ばれている中、会社に現金置いておくなんて正気じゃないわ。
  • とにもかくにも廃止してしまおう!
  • 必要があれば仮払金である程度の金額を最初に渡して、管理させるようにしよう。

小口現金1.0時代にやはり負担であった業務にメスが入ります。
不正のリスク・管理部門の工数削減のためには、なくすのが良いのは間違いないのです。

ただし、なぜ今まで小口現金があったのかというと、
社員の負担を減らすためという側面が強かったのです。

小口現金2.0時代では、従業員負担はむしろ増えています。
仮払金の支給でキャッシュフローは円滑ですが、
いつか返さなきゃいけないお金。

経費精算の量は増え、 年度末に残高確認で一筆書かされるなど、
気持ちのいいものではありません。

小口現金2.0のフェーズは企業論理が優先されるあまり、
従業員の都合が軽視されてしまっております。
経理も小口現金の負担はリリースされていますが、経費精算で同じ処理が行われており、
そこまで負担軽減につながっていません。

小口現金3.0時代

  • 小口現金の廃止が社員の立替増加につながり、社員の負担が増加するのもわかる。
  • しかも、それが経費精算の増加につながってるから、あまり工数も減っていない。
  • もっとwin-winな方法があるんじゃないか。

小口現金3.0時代はまさに現代です。
工数削減に加えて、従業員の立替の負担も減らす。

つまり、小口現金3.0時代は、小口現金を社員の負荷なくして廃止する、ということです。

そんなソリューションがあるのでしょうか?
RPAとか自動化とかAIが叫ばれている中、絶対できるでしょう!

小口現金廃止への道

ということで実際に従業員に負担を強いない小口現金の廃止にチャレンジして、
小口現金を廃止した過程をご報告します。

小口現金の残高・発生額・発生要因の洗い出し

  • 過去半年くらいの小口現金出納帳を要素ごとに分解する。

    • ちなみにスタプラでは以下のような支出がありました。
    • また、発生額はチームビルディング・交際費・採用会食が全体の80%超。
      • チームビルディング
      • 社外交際費
      • 採用会食(リクルート費用)
      • ユーザーインタビュー
      • 講演の謝礼
  • 平均残高を把握する

    • 残高が大きいほど、小口現金の依存率が高いので気合を入れる必要があります。
    • スタプラは年間平均額は500,000円でした。

どういうシチュエーションで誰が使っているのかを把握する

  • 要素分解が終わったらどういう場面で会社のどういう人が、使っているのかを調べます。
    • チームビルディング・交際費・採用会食:
      • 申請者はばらばらだが、部長やリーダーが参加している場合がほとんど。
    • ユーザーインタビュー:
      • 申請者は特定の人のみ。学生が多いためか謝礼も1,000円から5,000円と少額。
    • 講演の謝礼:
      • 申請者は特定の人のみ。 社会的ステータスがある人が多い。
        1回の支出は多いが回数は少なめ。

代替案の検討

  • 現状分析が終わると、とうとう集めた材料を基に代替案を検討します。
  • チームビルディング・交際費・採用会食:
    • 部長以上にコーポレートカード配布。カード決済で後払い化。
  • ユーザーインタビュー:
    • 対象が学生だったのもあり、Amazonギフトカードで代替。会社払いで現金支出をなくす。
  • 講演の謝礼:
    • 偉い人が多いのと、源泉徴収する可能性があったので請求書払いに変更。

全社展開

  • 代替案とともに現金のリスクを説明して、展開。
  • スタプラでは意外とすんなり受け入れられたが、
    最初は抵抗があることも考えられるので、社員側のメリットをひたすら説く。
  • 立替は増えない。小口現金をわざわざもらいに来る必要がなくなる。
    おつりも渡さなくていいんだよ!など・・・

結果

  • 展開初月から圧倒的な効果がでた。
    2か月後には小口現金支出は1-2件程度、3か月後はゼロになった。

  • 小口現金を持っている必要がなくなり、2018年11月1日をもって終了宣言。

効果

  • 小口現金支出のスケジュール把握がなくなる
  • 週1で数えていた現金実査がなくなる。
  • ATMや銀行で現金を下ろす必要がなくなる。
  • 小口現金出納帳廃止。仕訳入力もなし。
  • 現金をなくすリスク、不正のリスクがなくなる。

結局、全体で10-15時間/月くらいの工数削減になったのではと思います。

個人的に一番良かったのは、不正リスクがなくなったことです。
以前いた会社で入社早々横領があり、そのプロジェクトに参画したのですが、
小口現金が横領スキームの一部に利用されていたんですよね。

コーポレートの重要な使命である「社員に不正を起こさせない」が実践できてよかったです。

最後に

時代はすでに小口現金3.0時代です。

これからの会社はまず小口現金制度を作らない、というのが重要ですが、
今まで運用していてそのまま制度が残っている会社は
早急に廃止の方向に進めることをお勧めします!